人間の体には、ウイルスや細菌などの異物が侵入してきた時に、それらを攻撃・排除するという働きがあります。これを免疫反応といいます。
ところが、食物など、本来は体に害を与えない物質も異物と判断し、免疫反応が過敏に働いてしまうことがあります。その結果、じんま疹やかゆみ、咳などが引き起こされます。これがアレルギーです。
アレルギーの原因となる物質をアレルゲン(または抗原)といいます。食物アレルギーの場合、食物に含まれるタンパク質がアレルゲンとなるかは、人によってさまざまです。
日本では食物アレルギーのアレルゲンとして、鶏卵、牛乳、小麦が全体の3分の2を占め、特に鶏卵は40%近くを占めますが、これら以外にもたくさんあります。増えてきているのは、ピーナッツと魚卵(いくら)によるアレルギーです。また2013年9月には、ごまとカシューナッツが加工食品のアレルギー表示の推奨品目に加わり、注目されました。
食物アレルギーでは、食後2時間以内に下のような症状が出てくる、「即時型」と呼ばれるタイプが一般的です。
一つの臓器にとどまらず、複数の臓器に重い症状が現れる場合をアナフィラキシーと呼びます。
アナフィラキシーに血圧低下や意識障害などのショック状態を伴う場合をアナフィラキシーショックと呼びます。生命を驚かす可能性がある、非常に危険な状態です。
図に即時型食物アレルギー症状で病院を受診した即時型食物アレルギー患者さんの症状の出現頻度を示します(「食物アレルギー診療ガイドライン2012」による)。最も頻度の高い症状は皮膚症状ですが、重症のショック症状も10.9%存在します。日本で毎年3人程度が食物によるアナフィラキシーショックが原因で亡くなっています。
乳児から幼児早期の即時型食物アレルギーの場合、成長とともに症状が出なくなり、原因食物(アレルゲン)を摂れるようになっていきます。これを耐性獲得(アウトグロー)といいます。
ただアレルゲンによって耐性獲得しやすいものとしにくいものがあります。一般に鶏卵、牛乳、小麦、大豆は耐性獲得しやすく、ピーナッツ、ナッツ類、甲殻類、魚類、果物は耐性獲得しにくいアレルゲンと考えられています。
上記内容は、独立行政法人 環境再生保全機構 発行「食物アレルギーを正しく知ろう」より抜粋。